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『二十歳の責任』

「これでもう誰にも迷惑をかけないで済むわね」

私、最上キョーコは昨日二十歳になった。

成人になったことで、未成年だったこれまでは様々な申請書類で必要だった保護者のサインを多忙な母に頼む必要がなくなった。

事務所との契約も、事務所を通して受ける仕事も、自分の責任で決められる。

住まいの契約だって、保証会社を使えば何の苦労もなく可能だ。

…「ほら未成年なんだから」と、成人していないことを理由にあの先輩に心配をかけることもなくなる筈だ。

私は二十歳になった。

成人したのだ。

だから、先輩芸能人として芸能活動の心配をして下さるだけでなく、なぜか生活全般…365日の衣食住に関することまで気にかけて下さるようになったあの人の「ほら未成年なんだから」と言うセリフを聞くのは先週聞いたのが最後になる筈だ。

次回会った際には「君も成人したし、もう心配しなくて大丈夫だね」と言われるか、何も心配されることなくスルーか…どちらになるかわからないけれど、未成年であることを理由にアレコレ言われることはもうないと思って………いた。

「あの!!おっしゃってる意味がわからないんですけど!」

「どうして?もう二十歳の成人なんだから、あとはもう君自身がここにサインしてくれれば何も問題ないんだよ?」

「ここにサインって!そんなことできるわけが!」

「お母さんのことなら、未成年じゃないだから許可はいらないだろう?お母さんのサインもいらないし、ハンコも必要ない。届けを出したらすぐ万全の体制でご挨拶に伺えば問題ないから、大丈夫!ね?ほら、君のサインとハンコを済ませちゃおう?」

「ちゃお、じゃありません!!もう!敦賀さんどうしちゃったんですか〜!!」

「だから、最上さんも大人だし、大人同士の責任の所在をだね・・・うん、まあいいや、とにかく何でもいいからサインとハンコを先にしてくれないかな?君は成人であり今の君は自分だけの責任でこれが出せるようになったんだから、相手を間違えたりしないうちにちゃんと済ませてしまおう?善は急げだよ!とにかく俺は大人として男としてこの誓いに責任を持つから!ね?」

「だから!!二十歳の大人になって初めての責任の果たし方が婚姻届へのサインだなんて、誰が決めたんですか?おかしいでしょ?!おかしいですよね?」

「もう未成年の子供じゃないんだから、そんなこと言ってないで責任を果たそうよ!ほら、ペン持って!」

「いやぁ〜〜〜、無理やり書かさないでください〜〜!ミミズが這ったみたいな文字になってるじゃないですか〜〜!」

「君が達筆なのは知ってるけど、まあこれでも読めるから良いんじゃない?どうしても書き直したいと言うなら用紙はまだあるよ、ほら」

「な、なんですか、その束は!」

「失敗しても破れても平気なように。万が一提出前になくしてもこれだけあれば予定通り今日中に出せるしね」

「キョ、キョ、キョ!!!」

「どうしたの、キョーコ」

「キョ、キョ、キョ!!!」

「大人なんだし落ち着こうよ、キョーコ」

「キョ、キョ、キョ!!!」


敦賀さんの言う“二十歳の責任”をなかなか果たせない私は、もうかれこれ30時間敦賀さんのお家に缶詰状態であったりする。


これまで敦賀さんに迷惑をかけまくったツケの請求が、成人した途端にやってくるだなんて、誰が予想できたでしょうか!!

どうしましょう!

私払える自信がありません!!

も、もしかして!

実はこの書類には何か別の契約が隠されていて、サインした後に売り飛ばされたりのコース?

そうなの?

だったら納得・・・できないヨゥ!!

こんなことなら未成年のままでヨカッタわ!

早く誰にも迷惑をかけないで済む大人になりたいなんて思ってた私の馬鹿〜!

大バカモーーン!





キョーコの缶詰タイムは48時間に至るまで続いたという。

fin

2017年の拍手御礼話でした。
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『お役御免!』

「御馳走様。久し振りに食べたけど、やっぱり最上さんの作ってくれるご飯は美味しいね」

「お粗末様でした。そろそろ寒くなってきましたし、次は温かい汁物もご用意しますね」

4か月もご無沙汰していた最上さん手作りのお弁当。あまりに久し振りすぎて、一口食べる度にその美味しさに感激してしまい、食べ終えるまでに随分時間がかかってしまった。

最上さんとゆっくり会えたのも久々で、その可愛い笑顔にちょいちょい箸をとめ、見蕩れてたせいもあるけれど。

自分の楽屋で美味しいお弁当と可愛い最上さんを満喫した俺は、食後に彼女から受けた次回を匂わせる提案に思わず頬が緩んでしまう。だから、その次回にはより長い時間最上さんと一緒に過ごせるよう、送り迎えの約束を取り付けるための質問を投げかけた。

「荷物が増えて大変じゃない?」

「車ですから、平気です」

「え?…車…?マネージャーの?いや、でもマネージャーはついてないよね?」

──────最上さんに送り迎えの車が?一体誰の車に乗ってるんだ!?

お弁当の容器を片づけながら、慌てる俺の顔をおかしそうに見あげる最上さんの顔はとても可愛いが・・・・。

──────いや、久々だからって見蕩れてる場合じゃない!しっかりしろ、俺!

「ふふふ!マイカーです!!」

「め、免許とったの?いつ?」

「春に免許が取れたので、撮影の合間なんかにいろんな方の車を見せていただいて、車の選定をしてたんですけど、そのときに共演者の方から素敵な提案をいただきまして、今月やっと車を手に入れたんです!」

「そうなんだ、どんな車にしたの?最上さんなら、可愛いのを選びそうだよね?」

他の男の車でないことにはホッと出来たが、これはどう考えても俺にとってはいい報告じゃない。しかし、目の前の最上さんは、テレテレと抱きしめたくなるような笑顔を浮かべながら、嬉しそうに自分の車についての報告をしてくれている。

「最初はお手頃で可愛い小型車にする予定だったんですけど、仕事柄夜中にも走ることになるからあまり女性っぽいのは避けたほうがいいと、いろんな女優さんに言われまして…」

「まあ、そうだね、小型車はパワーもないし、煽られやすいし…事故のときも被害が大きそうだ」

「そうなんです!でも、私如きがその方々の言われるような迫力のある…高級車なんてとんでもない!と思ってたんですけど、先月出た番組で、◎◯さんが乗ってこられた車が馬車みたいで可愛くて!!もともとのデザインはかなり厳つい車なんですけど、◎◯さんのはアクセサリーなんかでレトロな感じに仕上げてらっしゃたんです!」

「…へぇ…」

「内装がまた凄く素敵で!!外は黒なんですけど、内装はお嫁にいった娘さんの好みとかで、上品な白の中に可愛いピンクのアクセントがきいてる感じで、ほんと、素敵だったんです!もう見た瞬間一目惚れしちゃって、◎◯さんに携帯で写真を取らせてくださいってお願いしたら、そろそろ処分しようと思っていたとこだから、譲ろうかって!!!」

「で、でも!こ。個人から譲られたのなら、車の整備状態とか心配だろう?…やっぱり危ないし、俺の…」

「いえ!!そこは大丈夫なんです!姪御さんにあげようと、整備を済ませたとこだったそうなんです!タイヤは全部新品ですし!」

「え?」

「姪御さんは、スポーツカーがお好みだそうで、駐車場に余裕もないからいらないって断られてガッカリされてるところに、私が車を褒めたのが嬉しかったそうで、◎◯さんからは今度のお誕生日会で、パーティ料理を作ってくれるなら只で良いとまで仰っていただいたんです!」

「…へぇ」

「そんなわけにはいかないので、お支払いしますって言ったら、パーティは是非頼みたいから、整備費用の100万でどう?と言うことで、話しがついたんです!他の出演者の方々からも、市場価格から考えたらめちゃくちゃ安いけど、一応大金と言える額を支払えばお互いスッキリするし、それで決めたほうがいいと言っていただいて!!パーティーも大規模だし、それを手伝うなら妥当な額だって」

「…そう…なんだ」

「はい!それで、支払いや手続きはうちの事務所で代行してもらえましたし、セキュリティなんかの手配や契約も事務所が済ませてくれたそうなので、安心して乗れてるんですよ!!あ!すみません!興奮して話してたら、移動の時間になってしまいました!」

「え、もう?」

「はい、では、これで失礼します」

「うん…また、ね?」

最上さんの車なら俺が用意したかった、な。いや、それより…今後はもう送り迎えさえさせてもらえなくなったのか。

俺と社さんが仕事の移動をするだけの手段というつまんない存在になりさがった愛車に向いながら、俺はどうしたらまた自分の車の助手席に乗ってもらえるかという解決策などでそうにない問題に頭を悩ませるのだった。


それから数カ月後。


「今日は久々に共演できて嬉しかったよ。ところで、次の現場最上さんもT◯Kだよね?俺今日はタクシー移動だから、よければ最上さんの車に同乗させてもらいたいんだけど…駄目かな?」

自分の車に乗せるのが無理なら、最上さんの車の助手席を確保すれば良いんだ!と、目標を変えた俺だったが…。

「大スターな敦賀さんを乗せて運転なんて真似、恐ろしくてできません!事務所にも怒られます!!」

キッパリバッサリ断られた。

ならば、「最上さんが思わず乗りたくなるようなメルヘンカー所有作戦」に実行するしかないと、こういうことに詳しそうな業界スタッフに情報をもらいながら、ベースとなる車両や内装カスタマイズ専門の施工業者を探し始めた。

だけど、自社ではないとはいえ他人を巻き込んだことで、あっという間に俺の計画は、マネージャーの社さんや主任、社長にバレることとなった。

「敦賀蓮のイメージが壊れるからそんな車に乗る気なら移動は送迎車しか許可しない」

事務所からの指導は、無情だった。

「そんなくだらない作戦立てる前にさっさと告白してこい!」

関係者全員、揃いも揃って、同じセリフを聞かせてくれる。

俺だって、わかっている。

告白するのが、正解だって。

だけど、告白すれば、最上さんが手に入る確証はない。

──────勇気を出して告白したとして「敦賀さんの事は尊敬してますし、崇拝していますが、恋愛対象の男性だと思ったことはありません。すみません!」とかなんとか言われたらどうするんだ?




結果的に、俺は最上さんに告白し、恋人同士になれた。

俺の車の助手席にまた座ってもらうまでの間に、半年の月日を要したのが良かったのか悪かったのか。

数ヶ月のうちにストレスで激やせした俺のマンションに「こっそり」通うには、自分の車ではない方が良いという理由で、最上さんは、俺の車に同乗してくれ、それをきっかけに告白できたのだ。

「同情で同乗だな!」と、社さんや社長に爆笑されまくったけれど、終わりよければすべてよし…だろう?


fin

2012年作です。

『悪い男』

「敦賀さん!なんてことしてくれたんですかぁ!」

彼女に本気で責められても、今日の俺は後悔なんてしない。

「酷いです!今回に限って事務所は協力してくれないし。他事務所の共演者の方に相談してやっと見つけたんですよ!なのに、なのにっ!か、勝手に…うっ…ひっく…」

か、彼女に泣かれても、今日の俺は怯まない…。

「ひっく…もう、敦賀さんなんて大嫌い!」

彼女に大嫌いと言われても、今日の俺は…俺はっ…。

「ひっく…もう敦賀さんとなんて別れちゃうんだから!」

彼女に別れると言われても、きょ、今日の俺は…………くっっ!!!!

「ごめん!本当にごめん!俺が悪かった」

「お願い、別れるなんて言わないで!」

「もう勝手なことしないから!」

「君と一緒に住みたかっただけなんだ!」

「お願い許して!」

前科何犯だか覚えてないほどいろいろ仕出かしてきたのは自覚している。

なので。

彼女の怒りはなかなか収まらず。

言葉で謝るだけではなんともならず。

今回も土下座でお詫びする俺。

なんか、格好悪いけどっ…。

これも、何度目か覚えてない位いつものこと。

最初の頃は本気な振りして謝れば許してくれたな。

それが通じなくなったときは、抱きしめて甘い言葉を織り交ぜて謝ってみせたら許してくれてた。

最近はそんなんじゃ無理なので。

身体全体で平謝り。

心の中ではちっとも悪いと思ってないけど。

ここで許してもらっておかないと、ホントに捨てられてしまう。
それだけは避けないと!

すっかり慣れてしまった彼女への土下座。

今回は俺の家でもラブミーの部室でもなく…

会社の廊下ですることになった。

ここでは初だな。

ほんと、人通りがなくてヨカッタ。

でも。

そのせいか、彼女が慌てて許してくれることもなく…



土下座で10分経過。

立てるかな、俺。


fin

魔人の中で「蓮の土下座ブーム」が巻き起こった2012年に書いた短編です。

「君ヲ焦ラス様ニ」

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「情熱的ナ時間ヲ君ト」

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